1.1.「ラテンアメリカ」の語の由来
スペイン語圏のアメリカ諸国は元々、スペイン植民地時代は「インディアス」(インドの意)、独立後は「
イスパノアメリカ」(スペイン的なアメリカ)と呼ばれていたが、19世紀のイスパノアメリカの知識人は、スペインを遅れた後進的な国家だと考え、自国をイギリスやフランスのような先進国にすることを望んでいたため、彼らにとって「スペイン的なアメリカ」という呼ばれ方は屈辱的なものだった。
そんな中で、
フランス第二帝政の皇帝
ナポレオン3世が1860年代に
メキシコへ出兵し、第二次
メキシコ帝国を打ち建てるに際して、フランス当局はメキシコとの文化的な繋がりを強調するため、「
ラテンアメリカ」(
ラテン的なアメリカ)という言葉を用いた。当時はラテンというと、即座に
ローマ帝国やフランスの文化に繋がったため、イスパノアメリカの知識人はこの名称を受け入れ、19世紀末から20世紀の
モデルニスモ文学の中で、イスパノアメリカ諸国(
ブラジルを除く)の思想的統合をラテンアメリカの名の下に図った。
20世紀に入り、ヨーロッパ諸国やアメリカ合衆国によるイスパノアメリカとブラジルを一体の政治・経済的概念とみなす視点は、徐々にイスパノアメリカとブラジルの知識人にこれらの地域を一体のものとして捉える視座を与えることになり、この地域をラテンアメリカと呼ぶことが一般的になった。つまり、この言葉は当初、
植民地主義から始まった言葉だったのである。