4.1.「住所不定」となることによる問題
住所不定の状態が長期にわたる場合、職権消除により
住民票が抹消される可能性がある。この場合、新規の移転先が存在しないため、住民票の復活が認められず、
浮浪者と同様の法的問題を抱える。たとえ職があり、所得があっても、新規に
銀行口座の開設ができない
(注1)。また、
住民基本台帳への登録がないと
印鑑登録もできず、
実印を必要とする高額の契約(
賃貸住宅の借入契約、
自動車や
住宅の購入など)は契約相手に拒否される。「賃貸住宅が借りられないから住民登録ができない」「住民登録がないから実印登録もできず、賃貸契約ができない」という
悪循環に陥る。現時点で寝泊まりする
短期賃貸マンションや
簡易宿所の所在する住所では住民登録が受理されない場合があるため、ホームレスが独力で住所不定状態を脱出することが困難な法的障害の一つとなっている。この他にも、
クレジットカードや
消費者金融などの契約時に信用調査で契約を拒否される可能性がある
(注2)。
また、新たに
運転免許証の取得ができない。既に運転免許証を取得している場合、免許証の更新には送付された更新通知書を提示するように指示されているが、これは必ずしも必須ではない
(注3)。しかし、職権消除により住民登録が抹消されている場合は、法的に「住所が変わっている場合」に相当するため、証明書類の提出を要する
(注4)ことから書類不備として受理されず、「住所がないので更新できない」事態が発生する
(注5)。
疾病などにより就労が困難になった際に
生活保護申請でトラブルになる可能性がある。例えば、「住民票所在地」と「現在地」が異なる場合、現在地
自治体が窓口業務をたらい回しにしようとする。生活保護の申請権は絶対性が保証されているが、役所が生活保護の申請自体を不正・違法に拒否する可能性が高い。本来は、職権消除により住民登録がない場合でも生活保護の対象となる(
生活保護法第19条二による職権保護)が、やはりトラブルが発生する可能性が高い(リンク先も参照)。
他にも、
選挙人名簿は住民基本台帳を基に作成されるため、職権消除されて相応の期間が経った後は
選挙権を実質的に喪失してしまう
(注6)などといった
公共サービスの
受益権や
公民権に関わる障害も負う。
ここまでの状況から、ネットカフェ難民も種々の場で通用する身分証明書類を取得できる手段は事実上限られてしまい、何らかのきっかけで携帯電話契約の内容更新をする際、
本人確認ができないという理由で携帯電話事業者から回線を一時停止されるなどの不利益を被る可能性が出てくる。ここで携帯電話回線を失ってしまった場合、社会的な関係すら一切絶たれてしまう重大な危機に瀕することになる。
ただ、最近になって
埼玉県蕨市の他、ごく一部の市町村において、インターネットカフェでの
住民登録を認める救済措置を採る事例も出始めている。
1.犯罪収益移転防止法(旧本人確認法)により公的な証明書が要求される。ただし運転免許証などは有効期限内なら、住民基本台帳の職権消除の後も、これを証明に銀行口座を開設できる場合がある。
2.「住所」「勤務先」が「共に存在すること」が審査に通る必須条件となる。
3.警視庁 更新手続一覧
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/menkyo/kousin/kousin00.htmを参照
4.警視庁 記載事項変更(住所・本籍又は氏名の変更の方)
http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/menkyo/menkyo/kisai/kisai00.htmを参照
5.運転免許証の更新に要求される住所表示は住民基本台帳法別表第1(第30条の7関係)により提供される情報に含まれていないので、免許更新者が住所が変更になった事実を隠したまま更新することは可能だが、法的には更新できない。また、何らかの理由で住所が変更になっている事実(住所不定状態)が分かれば更新が拒否される。
6.住民登録の復活ができれば選挙権も復活するが、住所不定の状況では住民登録が受理されない。