労働組合
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3.日本における労働組合
3.6.21世紀における日本の労働組合
2016年(平成28年)6月30日現在における単一労働組合の労働組合数は24,682組合、労働組合員数は994万人で、前年に比べて労働組合数は301組合(1.2%)の減、労働組合員数は58,000人(0.6%)のとなっている。また、推定組織率(雇用者数に占める労働組合員数の割合[27])は、17.3%となっている[28]。一方、パートタイム労働者の労働者組合員数は113万1千人となっていて、前年に比べて106,000人(10.3%)の、全労働組合員数に占める割合は11.4%となっていて、これらを調査事項に加えた1990年(平成2年)以降、過去最高を更新している[29]

組合活動の重点課題としての組織拡大についての取組状況をみると、「取り組んでいる」34.1%(前回29.6%)、「取り組んでいない」65.8%(前回68.4%)となっている。また、取り組まない理由(複数回答)としては「ほぼ十分な組織化が行われているため」51.3%(前回51.2%)が最も多く、次いで「組織が拡大する見込みが少ないため」27.7%(前回28.9%)、「他に取り組むべき重要課題があるため」20.8%(前回21.4%)などとなっている。組合活動の重点課題として組織拡大に取り組んでいる労働組合のうち、組織拡大の取組対象としている労働者の種類(複数回答)をみると、「新卒・中途採用の正社員」64.4%(前回54.4%)が最も多く、次いで「在籍する組合未加入の正社員」50.9%(前回50.5%)、「有期契約労働者」45.9%、「パートタイム労働者」34.4%(前回31.8%)などとなっている。組織拡大の取組対象としている労働者の種類ごとに組織化を進めていく上での問題点(複数回答)をみると、いずれの種類の労働者においても「組織化対象者の組合への関心が薄い」が最も多く、「パートタイム労働者」で59.6%、「有期契約労働者」で56.6%などとなっている[30]

組織率の低下[編集]


第二次世界大戦の直後は推定組織率も60%以上に達していたものの、昭和50年以降低下傾向にあり、2003年(平成15年)には推定組織率は19.6%となり初めて20%を切った。また、従業員1000人以上の大企業においては推定組織率は44.3%にも及ぶが、100人未満の小企業においては0.9%程度である[31]

組織率が低下した要因としては、まず企業別組合の組織からはみ出した非正規雇用の比率の増加が大きいとされる[32]。日本の企業別組合は正社員のみで組織されてきた歴史的経緯から、リストラパートタイマーアルバイト派遣社員・有期契約社員の増加などによる雇用の不安定化といった、21世紀における多くの労働者が実際に直面している問題への取り組みが大きく遅れることになった。現在、合同労働組合を中心に非正規労働者の組織化が進んでいて、非正規労働者側の権利意識の向上に努めている。また、サービス業など非正規労働者の割合が多い産業では企業内に非正規労働者のみで労働組合を結成する例、大都市圏では学生アルバイトの待遇改善を掲げる「学生ユニオン」などの例もある。2007年の春闘では、連合が非正規労働者の労働条件改善を要求として掲げ、同年、非正規雇用労働者の処遇改善、ネットワークづくりをすすめる「非正規労働センター」を開設した。

一方で新興企業や業績が好調な企業は組合がなくてもよい程度の賃金と労働条件が既に与えられていることも挙げられる。「カリスマ」的経営指導者の下、近年急激な成長を遂げた企業(ソフトバンク[33]楽天[34]サイバーエージェントなど)では、労働組合の組織すら見当たらない。また、多くの人材派遣業の会社には労働組合が無い。企業にとって万一の事態が起きた場合、その企業に組合が存在していると「迅速な」リストラ策が取りづらくなってしまう、という点が嫌気されて、投資家からは労働組合の存在について「株価にマイナス」と見る向きが多い。しかし同時に、健全な組合がないがゆえのリスクの側面をも見る必要がある。すなわち、「カリスマ」的経営指導者の行き過ぎを戒め、ブレーキをかけるものが実質的に不在になることで、経営危機へ追いやる可能性も高めるのである(カリスマ創業者が労働組合に厳しい態度を取ってきたため労働組合が求めてきた違法・脱法行為の是正や労働環境の改善が果たされず、結果として経営危機に陥ったコムスンゼンショーなどがこの事例である)。

また使用者側の法令違反が常態化したいわゆるブラック企業とされる会社では、労働組合の組織を試みた者に解雇や左遷などの報復を行うケースや、入社時に組合活動をしない旨を求められる(これらは不当労働行為にあたる)ケースもある。ブラック企業対策は近年大きな社会問題となっていて、社会全体で取り組むべき課題とされ、他人・他社の権利に関心を示してこなかった企業別組合の存在意義が試されている。

ほかにも、政府地方公共団体などの社会保障制度が組合に取って代わってきたこと、組織率の高い製造業から組織率の低いサービス業へ産業構造がシフトしたこと、組合活動に時間を割くことが避けられるようになったこと、2000年代以前からの不況などにより企業の再構築が進められ、会社・部門の統廃合・人員整理などが進んで労働組合が解散していったこと、春闘などで組合が十分な成果を挙げられないため組合の存在意義を感じにくくなったこと、一部の労働組合が労働組合の本来の目的を忘れて専従職員らが政治活動に夢中になっている等が挙げられる。

かつては労働運動が盛んに行われ、高度成長期時代の日本における賃上げ闘争などはまさにその事例のひとつである。労働者の生活レベルが現在よりもはるかに貧しかった時代には、日本人の生活水準向上(ひいては日本経済の拡大)に大いに貢献したといえる。1960年の三井三池争議までは大争議が多かったが、やがて労使交渉の合意達成の手段を労使とも学習していき、1980年代に入ると労使交渉を労働委員会に頼らず労使自治のもと自主解決を目指す民間労使関係へと転換した。こうして労使交渉をストライキなしで解決する仕組みと慣行が確立した結果、2012年の労働委員会へのあっせん等の申請件数はピーク時の10分の1以下である209件となっている[35]

バブル崩壊以降、正社員解雇に対しては、当然労働組合は反対の立場・抵抗の意思を見せるが、ストライキはほとんどなく、結果として団塊世代などの雇用を守る分、新卒採用を絞ることになり、若者の就職率悪化の要因の一つを作った、という意見がある。逆に、経営合理化に協力して、正規労働者の非正規労働者への置き換えに抵抗しなかったとして批判される場合もある。しかし雇用形態の多様化は経済団体(使用者側)の主導で行われており、労働組合に主要な原因があるかのような言説は、労働者側への責任転嫁の側面がある。

労使コミュニケーション[編集]


労働組合における使用者側との労使関係についての認識は、「安定的に維持されている」50.2%、「おおむね安定的に維持されている」36.6%、「どちらともいえない」7.2%、「やや不安定である」3.3%、「不安定である」1.8%となっている[36]

労使コミュニケーションを「重要である」と考える事業所の割合は、全体では87.5%であるが、労働組合のある事業所は「重要である」と考えている割合が95.3%なのに対し、労働組合のない事業所は「重要である」と考えている割合は84.0%にとどまる[37]

使用者と労働者とのコミュニケーションを円滑にする仕組みとして労使協議機関や職場懇談会が設けられることがあるが、労働組合のある事業所はない事業所よりもこれらを設置している割合が高い。全体では労使協議機関が「あり」とする事業所割合は39.6%、職場懇談会が「あり」とする事業所割合は52.8%となっているが、労働組合のある事業所においては、労使協議機関が「あり」とする事業所割合は83.3%、職場懇談会が「あり」とする事業所割合は66.3%なのに対し、労働組合のない事業所においては、労使協議機関が「あり」とする事業所割合は19.9%、職場懇談会が「あり」とする事業所割合は46.7%である。さらに、労使協議機関の「成果があった」と回答した事業所は、労働組合のある事業所では66.5%なのに対し、労働組合のない事業所は39.8%にとどまる。また労働者に対する調査では、全体では事業所に労使協議機関が「あり」と答えた労働者の割合は43.5%、「なし」28.6%、「わからない」26.2%となっているが、「あり」と回答した事業所は、労働組合のある事業所が75.3%なのに対し、ない事業所は22.6%にとどまる[37]

ネガティブなイメージ[編集]


日本の企業の経営者は、労働者の出世レースのゴールであることが多く(経営者と労働者の未分離)、それが過度の癒着、または対立を生む背景の一つであった。現在の日本では、労働組合活動自体があまり知られているとは言えない現状であり、労働組合というだけで「抵抗勢力」や「何にでも反対する」というレッテルを貼られがちであり、さらには先入観から労働運動自体に眉をひそめる人もいて、労働組合の果たしている労使協議等の多面的な機能が労働者に十分評価されていない。近年ではストックオプション制の導入など、労働者を経営側に取り込む動きも見られている。

一部の労組では、新左翼の影響の下に政治的な要求や現実離れした要求を振りかざし、他の組合との抗争に明け暮れるだけで、本来の役割である労働条件の向上はなおざりにしてしまった組合や、日本航空に見られるように、非妥協・対決路線に走り会社の現状を省みない組合となってしまったものもある(日本エアシステムとの合併がこの問題をさらに複雑にしている)。また、かつての国鉄労働組合国鉄動力車労働組合は旧国鉄時代、国鉄職員の日頃の勤務態度が芳しくない一方、利用者を省みない遵法闘争を繰り返して待遇改善を要求し、これが結果的に国民の国鉄離れや分割民営化を後押しする風潮を作り上げた。このため、経営側の視点からは、「労働組合が会社を潰す」という見方が広がってしまった。のみならず、公共交通機関における労働争議はその利用者から敵視され、暴動に発展するケースがあった[38]

一方「労使協調」を掲げた組合(産経新聞社日本航空(→日本航空の労働組合)など)では、形こそ労働組合として存在するものの、本来の機能を見失って形骸化し、会社側の言いなりとなって組合幹部が取締役会の末席に就くなど、「御用組合」「第二人事部」などと言われるに至る事例もある。場合によっては、そのような組合の存在自体が労働者に不利益となっていることもある。かつての日産自動車のように「労使協調」が労使間の癒着に発展した末に労働組合が経営や人事に介入するなど、社会的にも非難される行動に出る組合もあった[39]。また、「週刊現代」がJR総連に加盟している組合を告発する記事を掲載したときに、その記事の内容について争いがあったとはいえ、JR総連と労使協調関係にあるJR東日本グループの売店などで「週刊現代」を販売しないという手段を取った事例がある[40]

最近では岐阜県庁裏金問題に関して、全日本自治団体労働組合に加盟している岐阜県職員組合が組合の金庫に裏金を保管するなど、公金横領に深く関わり、雇用者である岐阜県庁との癒着が指摘された。これに対して自治労は、「県当局と緊張関係を持ち、一定のチェック機能を果たすべき職員組合が、県当局中枢が関与した組織ぐるみの隠蔽工作に与してしまったことは、岐阜県民はもとより国民に対する背信的行為であると断じざるを得ず、その信頼を失ったことは、慙愧の念に耐えず、構成組織の立場からお詫び申し上げたい」との談話を発表し謝罪した。

また、公務員の労働組合が行う「ヤミ専従」も問題視されていた(詳細はヤミ専従#問題となった例を参照)。

組合員および組合のシンパに対しては、経営者にとって不都合な場合が多いため「共産主義者」「アカ」などのレッテル貼りがおこなわれ、時折職場でのいじめが問題となる場合がある。実際には資本主義経済のなかで自身の労働に対する取り分を主張しているだけであり、サラリーマンを中心とした労働者給与賃金に対する主張を行うためにも労働組合を利用すべきである、という意見もみられる。これらの例から新左翼のイメージが付きまとい、一般に労働組合=社会党(現・社民党及び立憲民主党)や共産党の支持母体と看做されがちであるが、実際には政治的に保守的な思想を占め、自由民主党労働族と結びついた「自民党系労組」も旧くから存在している

また、最近はごく一部であるが、労働争議権を濫用し、争議権の範囲を越える街頭宣伝活動などをおこなう労働組合もみられる。たとえば、個人単位でも加盟できる東京・中部地域労働者組合は、最高裁判所解雇が正当であると認められたにもかかわらず解雇不当を訴えるなどの街宣活動を強行したため、解雇した企業とその代表者が裁判に訴え、東京地裁は「会社の名誉・信用を棄損し、平穏に営業活動を営む権利を侵害した」「虚偽の内容を含んだビラや執拗(しつよう)な街宣活動は表現の自由を逸脱し、平穏な営業活動を侵害する違法行為」と認定し、同組合に対して、対象企業近辺での街宣活動の禁止と200万円の損害賠償の支払いを命じた

偽装請負の黙認[編集]


近年蔓延してきた偽装請負については、これまで大労組が事実上「黙認」しているといわれても仕方がない状態であった。連合会長・高木剛もこの事を認めている[41]。理由としては、いわゆる御用組合化の進行により経営側の方針に労働組合側が反発しづらくなっていることと、偽装請負を解消する場合、経営側がそのコストを、組合員である正社員の賃金を削減することにより捻出しようとするおそれがあるため、組合員の不利益になることを指摘できないためである(これは、同様に問題化している「下請いじめ」についても同様なことがいえる)。

東日本大震災労働者対策本部[編集]


2011年3月14日、全労連・MIC・純中立労組懇は、東日本大震災労働者対策本部を設置し、復興にむけ支援物資やボランティアの協力を呼びかけ、被災者を支援している。4月14日、東日本大震災労働者対策本部と東京春闘共闘は日、東京・霞が関を中心に緊急要請行動を実施し、各省庁や東京電力への申し入れ、国会議員要請やデモ行進などを行った[42]

[4]前ページ
(3.5.個人事業主の労働組合)
[6]次ページ
(4.アメリカ合衆国における労働組合)
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出典:Wikipedia
2018/07/11 18:00
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