10.1.山田顕義の基本方針

既に完成済の財産法の残余部分､債権担保編･証拠編を引き続きﾎﾞｱｿﾅｰﾄﾞに､商法もそのままﾛｴｽﾚﾙに起草させ､人事編については主に熊野敏三､財産取得編中の相続､贈与､遺贈､夫婦財産契約は主に磯部四郎に担当させた^[324]｡

組織編成においては､仏法に精通するからこそ草案に異議を唱えそうな磯部らの若手法律家を報告委員に任じて議決権を与えず､主に西洋法に暗い委員に議決権を与えることで審議の促進を図った（磯部）^[325]｡

委員会の規則によってﾎﾞｱｿﾅｰﾄﾞの原案からの逸脱は禁止され､｢法理得失実施の緩急､文字の当否は之を議論するを許さ｣れず（法律取調委員会略則1条後段）､｢1日15条づつを議了することを要す｣（会議規則）ことが基本方針とされ､仏語原案の直訳調の法文にすることも要求された^[326]｡

それでもなお､翻訳に重きを置いた大木時代と異なり､条文の削除を中心とする草案の枠内手直しをする努力が行われた^[327]｡