21.9.民法典論争延長戦の決着

敗戦の結果やむなく改正するのではなく､民法典編纂史における議論の集積の上の必然的改正だというのが改正法起草者の主張である^[1392]｡

ここでは､法律上の家制度撤廃を徹底して､家族道徳の保護育成を全面的に教育に委ねようとする我妻榮（独法派^[1393]）と､戦前の代表的な家制度緩和論者として共通の立場に立ちつつも､家庭生活の積極的な破壊までを意図したものと誤解されることを憂慮する前出の牧野英一（仏法派^[1394]）とで対立があり､両者共に評価の低い妥協的規定が残ることになった（730条）^[1395]｡

民法冒頭にも条文の追加があり､男女平等原則（2条）を採用したほか､旧民法･明治民法に受け入れられなかった社会主義的規定は､ここでようやく正面から立法化されることになった（1条）^[1396]｡