福島第一原子力発電所
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5.発電所運営の経過
5.2.メンテナンス活動(1970-1980年代)
1969年2月、1号機の運転開始に備え、本発電所に発電準備事務所を発足した際、上述のように保安課が設置された。所掌は安全管理の諸準備、検査に使用する機材の点検(防護具の選定・改良、測定器の校正)、建屋内外の放射線管理などである。1号機のみ運転開始している状態であった1973年初頭の時点では、総勢34名であった[95]。RWP(放射線作業許可書)の発行も保安課の業務であった[96]。請負業者への保安管理説明講習会もこの課で実施し、1973年時点でビデオコーダーを使用した視聴覚教育で効率化を図っていた。課員達は平均年齢が26歳と若く、毎週勉強会を開催して各自が研究発表していたという[97]。サーベイ・メーターは多くの台数があり、1日1台は故障が出ていたが、修理には10年選手で原子力計画課で2年勤務後保安課設立時から転属した、第1種放射線取扱主任者を取得したベテランが当たっている風景が紹介されている[98]。ただし、1978年に『とうでん』で実施した座談会によれば、保修課から見ると作業安全管理は「作業能率といった面からだけ考えますと、やはり相当ブレーキになることもあります」と述べられ、着替えの手間が例示されている[99]
1973年頃には福島第二原子力建設準備事務所、広野火力建設準備事務所と本発電所の3事業所で「浜通り情報連絡会議」を毎週開催、公害総合本部を中心に各所長クラスが出席し、情報交換をしていた[100]。また、本店との情報連絡を早急に実施するために、テレファックスを導入していた[100]
本発電所第一発電課(1978年当時)によれば、2、3号機の例で、運転中に実施する検査として毎日実施する物が5種類、週1回実施する物が25〜30種類、その他、月1回、3か月に1回実施する事項などもあり全体では検査の種類はとても多いという[101]。原子力保修課課長(1983年当時)の笛木謙右によると保全作業は日常点検と定期検査に区分出来、日常点検では主要機器、安全施設・安全保護系の作動確認など、約85種類の試験が日、週、月、季等の周期で実施されている[102]
これに対して定期検査に当たっては、まず供用から10年毎に定められる「10年計画」、運転状況、電力供給の計画を考慮し、工程が組まれる[102]
本発電所が6機体制でひとまず完成状態となったのを機に目標は「安定運転の確保と稼働率の向上」にシフトした。このため1979年、本発電所発電部は組織再編され、発電課と保修課が設置された。目的は発電と保修を一体で運営するためであった。また、技術部技術課には安全の総合的責任を付与した。続いて、1980年7月には品質保証担当スタッフが設置された[103]
佐々木史郎の『精密機械』1982年1月号への投稿によれば、6機体制となってからは保修課は3課組織され、それぞれ互いに隣接するユニット2機を担当するようになっていた。各科の人員は60〜65名程度で課内は「工務」「原子炉」「タービン」「廃棄物処理」「電気」「計装」の6グループより成る。日常点検、定期点検の他、設備改良も業務内容に含まれていた[104]
1977年度入社後、本発電所保修課計装グループに5年半勤務した蓮池透によれば、発電所の完成によりGEの技術者が引き上げていった際、各種のマニュアル類は軒並み英語で書かれており、定期検査のための手順書や試験書は揃っていなかった。若手社員であった蓮池は定期検査のためマニュアル類を和訳し、日本語の試験手順書を作成に当たった。この他通産省の立会い検査のため、立会い検査手順書も作成した。苦労した点は略語の多さだという[105]。佐々木史郎はマニュアル類整備が不十分である点に触れて「複数の計測機器の誤校正の繰り返しが生じた場合、コモンモード故障を引き起こすことが考えられ、非常に重要な要素であり、今後改善の余地がある」と述べている[106]。英語と検査書類整備については当時若手社員として本発電所で過ごした者の指摘は他にもあり、後に所長として再赴任してきた大出厚(1973年入社)も初任地として保修課に配属され再循環ポンプの点検を任された際、仕様書の作成から検収まで実施した。検査方法が定型化されていない中で、英語の仕様書を和訳し、工事会社の関係者と一日じっくりと工事手順の確認を行ったという[107]
佐々木史郎によれば、良く指摘される外部への請負を職種別に分類すると機械工、溶接工、配管工、電気工、保温工、板金工などに分けられるという[104]
佐々木史郎によれば、定期点検のクリティカルパスの一つはCRDの交換作業で、自動交換装置を導入したのは同作業をクリティカルパスから除外することも目的の一つであったという[108]
蓮池によれば、運転員はアメリカでの訓練を受けた人材が多く配置されていたが、メンテナンスに関してはすべてをカバーするまではいっていなかったという。そのため、検査対象には漏れがあり、蓮池の発案で換気空調系の制御設備の点検を日本語で手順化し実施した際には、その部分はそれまで点検をしていなかったため錆が溜まっていたという[109]
当時、発電所停止に至るトラブルの原因は、もっぱら設計製作、施工不良に起因したものが多かったという。中でも機器については輸入品にその傾向が強かった。このため、納入される機器の品質保証を強化することにも力点が置かれていた[110]。豊田正敏は品質向上策として下記4点に集約して推進する旨を挙げている[111]
現地施工・保修工事における品質保証活動:下請多重構造の排除、作業者の技能向上、各種品質保証基準の整備、工事監理員による確認の徹底
品質保証関連情報の一元収集・管理
品質保証関連技術資料の管理方式の統一、コンピュータ管理の導入
1982年当時、本発電所技術部技術課長の職にあった榎本聰明は『とうでん』1982年10月の座談会で、初期は9か月運転し、3か月定期検査というのが(トラブルが無い場合の)標準サイクルだったものを、稼働率向上を目的に12か月運転、3か月検査を新しい標準目標するため、試行錯誤を重ねていたという[136]
笛木謙右が予防保全について述べた記事によると、火力発電所との相違点は安全機能維持と放射性廃棄物処理設備など、火力発電所に無い設備が加わるため、全設備量で約3倍になるという。具体的には、同社の110万kW級の場合下記のようになる[113]
ポンプ:約360台
弁:約3万個以上
電動機:約3000台
計器:約1万個
配管:約1万t(6インチ径換算で約250km)
笛木謙右によると直営ではなく請負工事を採用する事で「膨大な設備とその点検を円滑・効率的に実施」「電力と元請けが工事管理のチェック組織としてダブるように配慮」出来るとしている[114]
『とうでん』1983年6月号によれば、単なる機器交換に留まらない設備改善も実施され、インターロックや計装制御系のシステム設計を見直し、タービン計装系は多重化したという[110]
中央操作室は2機一室である。『とうでん』では6号機の定期検査を例に、5号機が通常運転中で当直員のみであるのに対して、6号機の方は10名の定期検査グループで監視し、燃料の崩壊熱の除去を検査中も継続するための炉心冷却系(及び同系の熱交換器に海水を送る残留熱除去系)と炉水浄化装置を作動させている場面を紹介している。これらの機器も定期検査の対象だが、2系統以上設備されていることを利用して適時切り替し、片系運転を行っている[115]
1983年の『とうでん』記事によれば定期検査の際は毎週1回、請負企業も含めて工程調整会議が開催されていた[115]
池亀亮が『エネルギーレビュー』1984年3月号に投稿したところによれば、標準的な定期点検の場合、保修工約1000名、30億円の費用がかかるとされている[116]
1984年に『経営コンサルタント』が本発電所を取材した際には、当時の所長住谷寛(6代目)は注意している点として「安定運転ですね。トラブルを絶対に起こさずに、安定した運転を永遠に続けてゆこうということです。かつては安全運転と言っていたんです。(中略)その安全といった願望を達成した今日においては、事故によって運転を止めないということなんです」「原子力発電を止めるということは、何かおかしいのではないか、ということにつながってくるんです。人間の心理というものはそんなものなんです」と述べている。ただし、住谷は運開以来「年間で八回から十回位の事故がありましたね」と述べ、地震での緊急停止や落雷による系統からの切断などを挙げている。なお、1978年に発生した宮城県沖地震では本発電所の揺れは停止信号を発信する閾値にまで達しなかったため、運転停止には至っていないという。故障の場合はプラントメーカーの技術者に補修を任せ、当時の東電では補修技術者の育成はしていなかったという[141]
1993年10月、東京電力は原子力部、火力部にそれぞれ技術センターを設置し、定期検査に自社要員を増員し工事監理能力を育成する方針に転換した。これに従い、原子力技術センターが本発電所内に設置された[142]
年4回定期的に実施している専用港湾の浚渫は1989年よりふたばというロボット型の作業船で実施されるようになった。
[4]前ページ
(5.1.スリーマイル原子力発電所事故の影響)
[6]次ページ
(5.3.応力腐食割れへの対応)
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出典:Wikipedia
2019/08/30 16:00
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