福島第一原子力発電所事故
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8.原因
8.2.現場の事故対応上の問題点
全電源喪失になると非常用復水器(IC, イソコン)の弁が自動で閉じることが現場作業員に周知されていなかったため、1号機が最初に注水停止し危険な状態に陥っていることが認識されていなかった。また現場作業員は誤った認識に基づいて非常用復水器を手動停止させていた。また第一原発の幹部は13日、3号炉の高圧炉心注水系 (HPCI) が手動停止している事実を知らなかったために、7時間にわたって注水作業が遅れてしまい、状況を悪化させた一因となったとされている[252]。とはいえ上記のように、福島第一原発では地震・津波対策が不十分だった上、過酷事故時の対応マニュアルも不十分だったため、全電源を喪失した時点で、その後現場で打てる手は限られたもので、十分教育されていなかった作業員の判断の問題ではなく東電の組織的問題だと国会事故調は指摘している[246]

1号機のIC作動状況の誤認[編集]


地震によって外部電源を喪失した後、1号機では非常用復水器 (IC) が自動起動した。非常用復水器は、原子炉内の蒸気を格納容器外のプール内の細管へ導いて冷却し、再び原子炉内へ戻して注水する原子炉冷却装置で、ポンプなどの動力を必要とせず自然循環によって動作する。非常用復水器にはその構造上、電源喪失時に一旦自動で弁が閉じ作動を停止する安全装置が付いているのだが、1・2号機中央制御室の現場作業員はICの運転経験がなく、誰もそのことを認識していなかった。政府事故調の報告によれば、津波により全電源を喪失した際に、ICの4つの弁の内、格納容器外側にある弁2・3は閉止し、格納容器内側の弁1・4は閉止動作途中に動力源となる電源を失って「中間開」の状態となった[247]。電源喪失後、中央制御室の制御盤は表示が消えてICの操作ができなくなっていたが、18時18分頃、一時的にバッテリーが回復して弁2・3が閉じていることを示したため、作業員は安全装置がはたらいて弁が閉まっていたことに気付き、制御盤で開操作を行った[248]。しかし、作動中に発生するはずの蒸気を目視で確認できなかったため、「空焚き」により非常用復水器が破損し放射性物質が外に放出される可能性があるという誤った懸念を抱き、18時25分頃再び弁3を閉じてICを停止させた[249]。実際には非常用復水器は空焚きによって破損することはないのだが、現場作業員はそれを理解していなかった。その後、制御盤の表示灯が再び消灯しそうになり、消灯すれば再起動できなくなると考え、21時30分頃に再度弁を開き、その後表示灯が消えて操作できなくなった[250]。こうした操作にも関わらず、1号機ICによる冷却機能はほとんど発揮されなかったとみられる[251]。弁1・4が中間開の状態で十分に蒸気がICへ流れなかった可能性があり、津波到達以降は作業員の弁開閉操作が原子炉に与えた影響は小さかったとみられる[251]
免震重要棟の対策本部でも、電源喪失によってICが自動停止した可能性を指摘する者はいなかった[252]。18時18分頃弁を開く操作をしたことが報告されたが、それまでICが停止していたことには注意は向けられなかった。18時25分頃再び停止させたことは対策本部に十分伝わらず、対策本部ではICが作動していると認識されていた[253]。そのため、3月11日夕方から夜にかけては、対策本部ではRCICの運転状況が不明だった2号機が最も危険だと認識され、1号機の注水が停止し炉心露出が始まっているという危機意識はなかった[254][253]
一方、国会事故調は、1号機ICについて、安全装置により自動停止したのではなく、炉心損傷によって早期の内にICの蒸気管に非凝縮性の水素ガスが充満し、そのために自然循環が阻害され、ICが機能喪失していたと推測している[255]

1号機ベント操作の遅れ、水素爆発の原因[編集]


政府の事故調査・検証委員会による1号機水素爆発に関する事情聴取から、現場側がベント操作が手間取ったことについて、現場には長時間の全電源喪失を想定した対応マニュアルがなく、よって手動によるベント手順も整備されておらず、設計図などから新規に手順作成しなければいけなかったこと、全電源喪失のためベント弁操作用バッテリーが必要とされた際、機材形式の連絡に不備があり、本社が調達し発送した多機種が一斉に搬入され必要機種の選別に手間取ったり、必要な機材が福島第二原発やJビレッジに誤配されて取りに行く手間が増えたなど、本社の援護が乏しく、突然の非常事態に現場側の混乱も多かったためとされている。
水素爆発については、多忙な現場では誰も水素爆発まで予見できなかったとされる。仮に津波がきて全電源を喪失し冷却ポンプが作動しなくなっても、非常用復水器(IC, ISO (Isolation) CONDENSER, イソコン)など各炉冷却系が起動し冷却するはず、という程度の甘い認識だった[263][264]
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(8.1.事故の根本原因)
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(8.3.災害対策に関する問題点)

252. “福島原発事故調 中間報告”. 東京新聞 TOKYO Web. (2011年12月27日). http://www.tokyo-np.co.jp/feature/tohokujisin/nucerror/report1226/ 2012年2月26日閲覧。 
253. 国会事故調 2012, p. 13-14.
254. 内閣事故調中間 2011, p. 98-100.
255. 内閣事故調中間 2011, p. 105.
256. 内閣事故調中間 2011, p. 106-107.
257. 内閣事故調中間 2011, p. 107-108.
258. 内閣事故調中間 2011, p. 102.
259. 内閣事故調中間 2011, p. 108-109.
260. 内閣事故調中間 2011, p. 109.
261. 国会事故調 2012, p. 151.
262. 国会事故調 2012, p. 14, 236-239.
263. “福島第1原発:東電、水素爆発予測せず ベント手順書なし”. 毎日jp. (2011年8月17日). http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110817k0000m040142000c.html 2011年8月27日閲覧。 
264. “隠されていた決定的ミス 東電はベントの方法を間違った!”. 現代ビジネス (2011年6月3日). 2017年3月28日閲覧。

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出典:Wikipedia
2018/06/15 17:31
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