言語
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3.世界の言語
3.1.言語の数と範囲の不確定
現在世界に存在する言語の数は千数百とも数千とも言われる。1939年にアメリカのL・H・グレイは2796言語と唱え、1979年にドイツのマイヤーが4200から5600言語と唱えており、三省堂言語学大辞典・世界言語編では8000超の言語を扱っている[12]

しかし、正確に数えることはほぼ不可能である。これは、未発見の言語や、消滅しつつある言語があるためだけではなく、原理的な困難があるためでもある。似ているが同じではない「言語」が隣り合って存在しているとき、それは一つの言語なのか別の言語なのか区別することは難しい(「言語」なのか「方言」なのか、と言い換えてもよい)。さらに、ある人間集団を「言語の話者」とするか「方言の話者」とするかの問題でもある。たとえば、旧ユーゴスラビアに属していたセルビアクロアチアボスニア・ヘルツェゴビナモンテネグロの4地域の言語は非常に似通ったものであり、学術的にはセルビア・クロアチア語として同一の言語として扱われる。また旧ユーゴスラビアの政治上においても国家統一の観点上、これらの言語は同一言語として扱われていた。しかし1991年からのユーゴスラビア紛争によってユーゴスラビアが崩壊すると、独立した各国は各地方の方言をそれぞれ独立言語として扱うようになり、セルビア語クロアチア語ボスニア語の三言語に政治的に分けられるようになった[13]。さらに2006年にモンテネグロがセルビア・モンテネグロから独立すると、モンテネグロ語がセルビア語からさらに分けられるようになった。こうした、明確な標準語を持たず複数の言語中心を持つ言語のことを複数中心地言語と呼び、英語(イギリス英語アメリカ英語など)などもこれに含まれる。

逆に、中国においては北京語やそれを元に成立した普通話(標準中国語)と、上海語広東語といった遠隔地の言語とは差異が大きく会話が成立しないほどであるが、同系統の言語ではあり、書き言葉は共通であるためこれら言語はすべて中国語内の方言として扱われている。

同じ言語かどうかを判定する基準として、相互理解性を提唱する考えがある。話者が相手の言うことを理解できる場合には、同一言語、理解できない場合には別言語とする。相互理解性は言語間の距離を伝える重要な情報であるが、これによって一つの言語の範囲を確定しようとすると、技術的難しさにとどまらない困難に直面する。一つは、Aの言うことをBが聞き取れても、Bの言うことをAが聞き取れないような言語差があることである。もう一つは、同系列の言語が地理的な広がりの中で徐々に変化している場合(言語連続性または方言連続性という)に、どこで、いくつに分割すべきなのか、あるいはまったく分割すべきでないのかを決められないことである。

こうした困難に際しても、単一の基準を決めて分類していくことは、理屈の上では可能である。しかしあえて単一基準を押し通す言語学者は現実にはいない。ある集団を「言語話者」とするか「方言話者」とするかには、政治的・文化的アイデンティティの問題が深く関係している。どのような基準を設けようと、ある地域で多くの賛成を得られる分類基準は、別の地域で強い反発を受けることになる。そうした反発は誤りだと言うための論拠を言語学はもっていないので、結局は慣習に従って、地域ごとに異なる基準を用いて分類することになる。

言語と方言の区別について、現在なされる説明は二つである。第一は、言語と方言の区別にはなんら言語学的意味はないとする。第二のものはまず、どの方言もそれぞれ言語だとする。その上で、ある標準語に対して非標準語の関係にある同系言語を、方言とする。標準語の選定は政治によるから、これもまた「言語と方言の区別に言語学的意味はない」とする点で、第一と同じである。この定義では、言語を秤にかけて判定しているのではなく、人々がその言語をどう思っているかを秤にかけているのである。

ある言語同士が独立の言語同士なのか、同じ言語の方言同士なのかの判定は非常に恣意的であるが、その一方で、明確に系統関係が異なる言語同士は、たとえ共通の集団で話されていても、方言同士とはみなされないという事実も有る。たとえば、中国甘粛省に住む少数民族ユーグ族は西部に住むものはテュルク系の言語を母語とし、東部に住むものはモンゴル系の言語を母語としている。両者は同じ民族だという意識があるが、その言語は方言同士ではなく、西部ユーグ語、東部ユーグ語と別々の言語として扱われる。また海南島にすむ臨高人も民族籍上は漢民族であるが、その言語は漢語の方言としては扱われず、系統どおりタイ・カダイ語族の臨高語として扱われる。

なお、使用する文字は同言語かどうかの判断基準としてはあまり用いられない。言語は基本的にどの文字においても表記可能なものであり、ある言語が使用する文字を変更することや二種以上の文字を併用することは珍しいことではなく、また文法などに文字はさほど影響を与えないためである。(たとえば日本語をアルファベットのみで表記したとしても、それは単に「アルファベットで書かれた日本語」に過ぎず、何か日本語以外の別の言語に変化するわけではない)。上記のセルビア・クロアチア語においてはクロアチアが主にラテン文字を、セルビアが主にキリル文字を用いていたが、ユーゴスラビア紛争において両国間の仲が極度に悪化するまでは同一言語として扱われていたし、デーヴァナーガリー文字を用いるインドの公用語であるヒンディー語ウルドゥー文字を用いるパキスタンの公用語であるウルドゥー語も、ヒンドゥスターニー語として同一言語または方言連続体として扱われることがある。

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出典:Wikipedia
2019/03/29 16:30
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