火垂るの墓
▼人気記事ランキング
6.アニメ映画
6.5.製作の経緯
映画『火垂るの墓』は、1988年(昭和63年)の公開時、宮崎駿監督作品『となりのトトロ』と同時上映されているが、先に企画された『となりのトトロ』は、当初、60分程度の中編映画として企画されており、単独での全国公開は難しかった[23]。そこで同時上映作品として高畑勲監督作品『火垂るの墓』の企画が決定したという経緯が伝えられている。
最終的に、両作とも上映時間は90分近くなり、長編2本体制で公開された。アニメ映画界の二大巨頭の代表作、しかも作風も物語も印象も全く相反する内容の作品を一緒に観ることができたが、当時としてみれば地味な素材であった上、東宝宣伝部が消極的だったことや[24]、高畑・宮崎両監督の一般的な知名度も現在ほどではなく、公開日が春休み後の中途半端な時期でもあったため、配給収入は5.9億円と伸び悩んだ。評論家からは好評で『キネマ旬報』誌の日本映画ベストテンでは6位に食い込んでいる。
両映画の制作はスタジオジブリで同時に進行した。東映動画でも長編作品を2本同時進行したことはなかったといい、高畑・宮崎の信頼に耐える主要スタッフ(アニメーター)は限られており、人員のやりくりに制作側は苦慮することになった[25]。特に揉めたのが作画監督の近藤喜文の処遇であった。結果として宮崎側が新しく参入したスタッフを中心に制作したのに対し、高畑側は近藤や美術監督の山本二三など旧知のベテランを集めた。高畑は後年の回想で、近藤を獲得することが(人材面での)「最優先、いや絶対的な課題」であったと述べ、それ以外のメンバーについては自ら勧誘には動かなかったとしている[26]
当初は両作とも60分であったが、高畑の『火垂るの墓』の時間が長くなると、対抗するように宮崎の『となりのトトロ』の時間も延び[27]、結果的に長編2本の同時進行となった。しかし、彩色の作業がどうしても公開までに完了しないことが判明する[26]。高畑は、大幅なカットで破綻させることなく観客の鑑賞に堪える方法を百瀬義行とともに検討し、「『演出意図』としての必然性が感じられれば、見る人に受け入れてもらえるのではないか」という「苦肉の策」で、1988年(昭和63年)4月の公開時点では清太が野菜泥棒をして捕まる場面などを色の付かない白味[28]・線撮り[29]の状態で上映することとなった[26]。これらの箇所は公開後も制作を続け、後に差し替えられている。
わずかながらも未完成のままでの劇場公開という不祥事に、高畑勲はいったんアニメ演出家廃業を決意したが、後に宮崎駿の後押しを受けて1991年(平成3年)に『おもひでぽろぽろ』で監督に復帰することになる(おもひでぽろぽろも本作と同じように過去の思い出しである)[30]
徳間書店社長・徳間康快の要請を受け、野坂の原作小説を文庫として販売している新潮社が『火垂るの墓』の出資・製作となっている。新潮社がメディアミックスで映像製作に携わる初めてのケースとなった。こうした経緯もあって、ビデオやLDは徳間系列ではないパイオニアLDCから発売され、その後リリースされたDVDも、ジブリ作品としては例外的にワーナーの扱いとなっていた(新潮社との契約が満了した2008年(平成20年)8月以降はブエナビスタから再発されている)。2012年(平成24年)4月にはBlu-ray Disc版が発売された。
[4]前ページ
(6.4.賞歴)
[6]次ページ
(6.6.監督の意図)

23. 叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年、p113
24. 叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年、p123
25. 鈴木敏夫『映画道楽』ぴあ、2005年、p101-p102
26. 高畑勲「『火垂るの墓』から、はや二十四年」『アニメーション、折にふれて』岩波書店、2013年、pp.122 - 126(初出は『百瀬義行 スタジオジブリワークス』一迅社、2011年)
27. 鈴木敏夫『映画道楽』ぴあ、2005年、p107-p108
28. 本来映画用語では"アフレコに際して絵も全くなく担当する部分を色の線の長さや形状等で示した状態での収録"を指す。なお画像を全く持たない状態からの収録をするプレスコでは極普通の手法である。
29. アニメ用語では本来"彩色のない原動画を絵コンテ等に合わせて完成アニメと同じタイミングで撮影したもの"を指す。
30. 魔女の宅急便』TV初公開時の宮崎駿の発言

~目次に戻る
出典:Wikipedia
2018/04/19 02:30
ソ人気記事ランキング
2018/04/20 更新
 1位永山則夫連続射殺事件
 2位セウォル号沈没事故
 3位アクロイド殺し
 4位4月19日
 5位タイタニック (客船)
▲上に戻る
[9]Wikipediaトップ
[0]gooトップ
免責事項
(C)NTT Resonant