仮名手本忠臣蔵
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12.九段目・山科の雪転し
12.1.あらすじ(九段目)
雪転し〈ゆきこかし〉の段)雪の深く積った山科の由良助の住い。そこにあるじの由良助が、幇間や茶屋の仲居に送られて朝帰りである。由良助はいい歳をして積った雪を雪こかし、すなわち大きな雪玉にして遊ぶ。奥より由良助の妻お石が出てきて由良助に茶を出すが、それを一口飲んだ由良助は酔いが過ぎたかその場でごろりと横になってしまう。せがれの力弥も出てきたので、幇間や仲居たちは帰っていった。やがて由良助も丸めた雪が溶けぬよう、日陰に入れておけと言い残しお石や力弥とともに奥へと入った。

山科閑居の段)加古川本蔵の妻戸無瀬と、その娘の小浪がこの山科の閑居に来る。小浪はすでに花嫁衣裳のなりで、本日この場で力弥との祝言をあげようという心積もりである。「頼みましょう」という戸無瀬の声に下女のりんが出て母娘を座敷に通し、やがてお石が二人の前に現われた。

戸無瀬は、以前よりいいなづけの約束があった力弥と小浪の祝言をあげさせたいので、本日娘を連れ、夫本蔵の名代として訪れた旨をお石に話す。だが、それに対するお石の返答はにべもない。以前確かにいいなづけの約束はしたが、今は浪人者のせがれでは下世話にいう提灯に釣鐘というもの。つりあわぬ縁だからこっちには気遣いせず、どこへなりともよそへ縁組して下さいというので、戸無瀬は思わぬ返答にはっとしながらも、もとは千五百石取りの国家老だった由良助殿、五百石取りの本蔵と釣合いが取れぬはずが無いというのを、「イヤそのお言葉違ひまする」とお石はさえぎった。

「五百石はさて置き、一万石違うても、心と心が釣合へば、大身の娘でも嫁に取るまいものでもない」「ムムこりゃ聞きどころお石様。心と心が釣合はぬと仰るは、どの心じゃサア聞こう」と戸無瀬はお石に詰め寄るが、お石は、旧主塩冶判官が師直に殿中で斬りつけたのは、師直よりあらぬ侮辱を受けて起こったこと、それに引き換えその師直に進物を贈って媚びへつらう追従武士の本蔵の娘では釣合わないから嫁にはできぬという。「へつらひ武士とは誰が事、様子によっては聞捨てられぬ…」と夫を罵られた戸無瀬は、それでもやはり娘可愛さから、なおも小浪を力弥の妻として認めてくれるようお石に頼む。が、お石は「女房なら夫が去る。力弥に代わってこの母が去った」と言い放ち、襖をぴっしゃりと締め奥へと入ってしまった。

これまでの様子を黙ってみていた小浪は、わっと泣き出す。戸無瀬は娘に、力弥のことは諦めてほかに嫁入りする気はないかと尋ねるが、あくまでも力弥と添い遂げたいという小浪の気持は変わらなかった。こうなってはせっかく送り出してくれた本蔵のところにも、もはや申し訳なさに帰れない。戸無瀬と小浪は、この場でともども自害しようとする。

戸無瀬は、差してきた本蔵の刀でまず娘を斬ろうとした。「母も追っ付けあとから行く。覚悟はよいか」と立ちかかると、ちょうど表には尺八を吹く虚無僧が来て、「鶴の巣籠り」の曲を奏でている。「鳥類でさへ子を思ふに、咎もない子を手にかけるは…」と嘆きのあまり足も立ちかね手も震えたが、何とかそれを押さえ、戸無瀬は刀を振り上げ小浪を斬ろうとした。その下に座す小浪は、念仏を唱えながら手を合わせている。このとき、奥より声が聞えた。

「御無用」

娘を斬ろうとする戸無瀬は、思わずこの声に動きを止めた。すると表に立っていた虚無僧も、尺八の音を止める。とまどう戸無瀬。いや、今の「御無用」とは虚無僧を追い払うための言葉であろう。自分たち母娘の自害を止めたのではないと、戸無瀬は「娘覚悟はよいかや」と再び刀を振り上げた。その拍子にまたも「御無用」の声。

「ムム又御無用ととどめたは、修行者(虚無僧)の手の内か、振り上げた手の内か」「イヤお刀の手の内御無用。せがれ力弥に祝言さしょう」と、お石が何も載せていない白木の三方を捧げ持ちながら、戸無瀬と小浪の前に現われた。「殺そうとまで思ひ詰めた戸無瀬様の心底、小浪殿の貞女、志がいとほしさにさせにくい祝言さす」というお石。だがそのためには、「世の常ならぬ」引き出物をこの三方で受け取ろうという。戸無瀬は自分が差している本蔵の刀を差し出そうとするが、お石はそれを受け取らない。「ムムそんなら何がご所望ぞ」「この三方へは加古川本蔵殿の、お首を乗せて貰ひたい」

「エエそりゃ又なぜな」と驚く戸無瀬にお石はさらにいう。本蔵が止めたせいで塩冶判官は殿中で師直を討ち果たすことが出来ず、むざむざとご切腹なされたのである。その憎しみが本蔵にかからないと思うのか。家来の身としてそんな本蔵の娘を、何の気兼ねも無しに嫁にできる力弥ではない。「サア、いやか、応かの返答を」とお石が迫る。戸無瀬と小浪はうつむいて途方にくれるばかりである。

そんなところに「加古川本蔵の首進上申す」と、それまで表にいた虚無僧が内へと入ってきた。編笠を脱いだその顔を見れば、それは他ならぬ加古川本蔵だったのである。戸無瀬も小浪もびっくりする。

「案に違はず拙者が首、引き出物にほしいとな。ハハハハハ…」と本蔵は、お石を嘲笑う。主人の仇を報じようという所存もなく遊興や大酒に溺れる由良助、そんな「日本一の阿呆のかがみ」ともいうべき者の息子へ娘を嫁にやるために、この首は切れぬといって三方を踏み砕いた。これにお石は「ヤア過言なぞ本蔵殿、浪人の錆刀切れるか切れぬか塩梅見しょう」と、長押の槍を取って本蔵に突きかかったが、本蔵も留め立てする戸無瀬と小浪を邪魔ひろぐなと退きのけてお石と争い、最後はお石が本蔵にねじ伏せられた。そこへ怒った力弥が出てきて、お石の手から離れた槍を取り上げ本蔵めがけて突く。槍は本蔵の脇腹を突き通した。槍を突かれて倒れる本蔵に、力弥は戸無瀬や小浪の嘆きも構わずに止めを刺そうとすると、「ヤア待て力弥早まるな」と由良助がその場に現れる。

「一別以来珍しし本蔵殿。御計略の念願とどき、婿力弥が手にかかって、さぞ本望でござろうの」と、由良助は娘のためわが身を犠牲にする本蔵の真意を見ぬいていた。

本蔵は語る。主人若狭之助が鶴岡で師直より受けた侮辱によりこれを恨み、討ち果たさんとするのを知った。そこで先回りして若狭之助にも知らせず、師直に進物を贈って機嫌を取り持った。この賄賂は功を奏したが、今度はその矛先が塩冶判官に向けられてしまった。塩冶判官が刃傷に及んだとき、飛び出してその後ろを抱きかかえて止めたのは、師直が軽傷で済めばまさか厳しいお咎めにはなるまいと判断したからであった。だがその予想は裏切られ判官は切腹、塩冶家はお取り潰しの憂き目にあう。おかげで力弥に嫁入りしようという娘小浪の難儀ともなった。だからせめてもの申し訳に、この首を婿の力弥に差し出そうというのである。「忠義にならでは捨てぬ命、子ゆえに捨つる親心推量あれ由良殿」と、涙にむせ返りながら語る本蔵の様子に、戸無瀬や小浪はもとより大星親子三人もともに嘆くのであった。

由良助は障子を開け、奥庭に置いた雪で作ったふたつの五輪塔を見せる。由良助と力弥親子の墓のつもりである。覚悟のほどを見た本蔵は、「婿へのお引きの目録」と称して師直邸の絵図面を渡す。由良助は師直の館へ討入りの際、雨戸のはずし方について自ら庭に降り立ち、庭の竹をたわめてその反動ではずす方法を本蔵に見せると、本蔵は「ハハア、したりしたり」と誉めた。由良助は討入りの用意にすぐさま摂津の堺へと立つことにしたが、本蔵の使った深編笠や袈裟で虚無僧に変装する。本蔵は人々が嘆く中に事切れる。力弥と小浪は双方の親から晴れて夫婦と認められたが、それも一夜限りのこと、由良助はそんなふたりをあとに残し、堺に向けて出立するのだった。

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出典:Wikipedia
2019/07/08 10:00
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