ナザレのイエス
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4.「史的イエス」の復元
4.2.史料批判における諸問題
様々な古代の思想家と同様、イエスは自分の思想を文字に記すことはなかった。また、彼の直弟子たちの手によって、その生涯が書き残されることも無かった。
イエスの行動を記した資料である福音書は、彼の生涯を忠実に記すことを意図したものではなく、それぞれの著者が属していた初期キリスト教団の思想を表すための、宣教文書であると考えられ[60]、その資料としての信頼性は限定的である。

キリスト教外部による史料[編集]


非キリスト教徒による一次史料は少ない。

イエスの名前が初出するキリスト教外の文書では、フラウィウス・ヨセフスの『ユダヤ古代誌』(18:63)やタキトゥスの『年代記』などのごく一部にイエスに関する記述があるが、前者は後代の一部加筆を疑われており、後者は同時代史料でないばかりか、キリスト教徒(「クレストス」を開祖とする宗教)に言及したものである。したがって、イエスの実在性の根拠とするには問題を含んでいる。

しかし、紀元後30年ころにローマ皇帝に対する反逆罪で磔刑に処せられた人物のあったことについては、ローマやユダヤ側の史料によってもある程度裏づけられる[61]。また、十字架刑は、当時のローマ法で規定された刑罰であった。

2008年にキリストに言及した最古のものであると考えられる記述を持つ容器がアレキサンドリアの海中遺跡でフランス人考古学者のフランク・ゴディオ氏を中心とする発掘調査グループにより発見された。この容器は紀元前2世紀後半から紀元1世紀前半のものであり、容器の表面には古代ギリシャ語で「DIA CHRSTOU O GOISTAIS(魔術師たるキリストによるもの)」という文字が刻み込まれている[62]

2012年ハーバード大学の研究者がイタリア・ローマで開かれた学会で、キリストの妻についての発言を記載した古いパピルス片が見つかったと発表した。発表を行ったのはハーバード大学神学校のカレン・キング教授。パピルスの紙片は縦3.8センチ横7.6センチほどの大きさで、エジプトのキリスト教徒が使うコプト語の文字が書かれている。この中に、「キリストは彼らに向かい、『私の妻が…』と発言した」と記された一節があった。紙片は個人の収集家が所蔵していたもので、2011年にハーバード大学に持ち込まれ、キング教授が調べていた。ニューヨーク大学の専門家に鑑定を依頼した結果、本物のパピルスであることが確認されたという。キング教授によると、内容はキリストと弟子との対話を記録したものとみられ、2世紀半ばごろに書かれたとみられる(のちの調査によれば断片自体は6-9世紀におそらく写されたもの)。表裏の両面に文字が書かれており、書物の1ページだった可能性もあるという。ただしこの紙片は、キリストが結婚していたとする説を裏付ける証拠にはならないとキング氏は指摘する。一方、キリストが未婚だったことを裏付ける証拠もないといい、キング氏は記者会見で「キリストが結婚していたかどうかは分からないという立場は、以前と変わっていない」と強調した[63]

キリスト教内部による史料[編集]


イエスの事績を記述するキリスト教文書(聖書)において、現在残されているイエスに言及する最古の史料は新約聖書内のパウロの真筆と想定される書簡(『パウロ書簡』)である。

しかし、これら残存するパウロの文書には、生前のイエスと直接会っていることをうかがわせる記述はなく[64]、書簡の中でパウロが出会ったと証言しているのは「復活後のキリスト」である。また、パウロにおいて史的イエスの実像を記述した証言は、ほぼ皆無に近い。

『新約聖書』に含まれる、福音書やその他の書簡などの文書についても、イエスの弟子の名前が冠されているものの、イエスが刑死した後かなり年代が経過した1世紀後半以降に成立したと推定されており、これらの文書の筆者もイエスを直接には知らないと考えられている [* 18]。したがって、『パウロ書簡』は、実在性を証明する一次史料ではない。しかしながら、パウロの真筆の手紙によって、イエスの弟子であるペトロや他の使徒たち、またイエスの兄弟であるヤコブの実在は疑いの余地がない。

もし、イエスが実在しないと仮定すれば、かれらが実際には存在していない自分たちの指導者を作り上げ、いかなる宗派のユダヤ教思想でも考えられないことに、その人物を「神の御子」と呼び、しかもローマ帝国によって「神の御子」が処刑されたうえに、さらに、その死後復活したという教えを説いてまわったということになる。かれらに何故そのような複雑で何重にもわたる虚構捏造する必要があったのか、大きな疑問がのこる。

「史的イエス」を福音書の言行から復元する試みは19世紀より盛んに行われ、聖書内に描かれているイエス像が現実性を欠くことや、各福音書や外典のイエス伝が大部分で相互に矛盾するといったこと、またイエスに関する確実な一次史料を欠いていることを理由に、例えばヘーゲル左派などからイエスの実在自体を否定する見解が出されるに至った。しかしながら、その後の新約聖書学の提供する知見からイエスの実在を否定する論はほとんど支持されていない[66] [67]

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(4.1.復元の根拠となる資料)
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(4.3.復元されたイエス像)
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出典:Wikipedia
2019/09/27 17:00
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