セシウムさん騒動
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7.検証番組
7.1.検証で指摘された最大の原因
電波に誤って乗った不適切テロップの消去操作は最終的にサブのスイッチャーが行ったが、

本番前準備の段階で何度もテロップ原稿チェックの機会がありながら、コミュニケーション不足で機能しなかったこと
そのために生放送まで不適切内容が未修正のまま残り、その旨がスタッフ全員に伝わらなかったこと
未修正であることを事前に知らされず、突然の誤送出時に初めてそれを見る形となったこと
が今回の「セシウムさん事件」の直接要因だった。

東海テレビ社員及び外部スタッフを対象に年に数回実施されている「放送倫理研修会」と、東海テレビ社員及び外部スタッフに配布されている「放送倫理及び番組制作ハンドブック・放送基準冊子」では、「不快感や嫌悪感を(視聴者に)与えない、品位ある番組作りに努めること」と謳っており、こうした倫理が全スタッフに隅々まで浸透していれば今回のような事故は起きなかった。「正しい放送倫理を制作現場へいかに徹底させるか」も東海テレビが反省すべき今後の大きな課題と結論づけている。

検証委員会(当時)は「今回の不適切テロップ誤放送は"ぴーかんテレビ"という一つの番組内のみの問題ではなく、会社(東海テレビ)全体の問題としてその土壌(職場の雰囲気)に原因・背景がある」と考え、第三者の立場から東海テレビ全社員及び東海テレビ番組制作に携わる外部スタッフに上記のヒアリングに加え今回の「セシウムさん事件」についてのアンケート調査を実施。それに寄せられた意見も一部紹介した。寄せられた回答は244通であった。特に多かった回答は下記の通り。

「東海テレビの膿が出た。今回の騒動は『風評被害を防ぎ正しい情報を伝えるべき放送メディアが起こした問題』として猛省すべき」
「最大の要因はコミュニケーション(意思疎通)不足と思う。特にテロップ制作者へ正しい放送倫理を事前に教えていれば今回のミスは防げ、あのようなテロップも作られなかったと思う」
「東海テレビ経営陣は目先の利益にばかりとらわれすぎて、放送が担うべき本来の使命を忘れていたのではないか」
「“ぴーかん”は放送枠が95分に拡大されて報道色の濃い物になったが、スタッフは対応出来るものではなかった」
「スタッフの増員は殆ど行われず、仕事量と現場人員数の実態把握が不十分だったのではないか」
「視聴者の方々の信頼を裏切り、かつ岩手・東北の皆さんや全国の農家の皆さんを深く傷つける結果となり、大変心苦しい」
「制作費削減の流れを受けてスタッフ数が限られる中、総勢88人でこれだけ大規模の情報番組を制作・放送するには無理がある」
「現場スタッフの仕事量が増えるのに人手不足。スタッフ一人の仕事量は多く、複数の仕事を一人で何役もこなすこともしばしば」
「東海テレビは人員削減を進めてきたのに、自社制作番組は残しすぎていたことで制作現場の負担が増大し、今回の放送事故に繋がったのでは。もはや自社制作比率を他局・他系列と競う時代ではないと思う(必ずしも自社制作比率が高ければ視聴率が取れCM収入も増えるとは限らないから)」
「放送当時に実施されていた人事計画は“社員削減”“新規採用凍結”“リストラ”ばかり終始した正社員削減計画だった」
「無駄は省くべきだが、放送運行上不可欠な設備までもが経費削減(リストラ)の対象になるのは行き過ぎだと思う」
「ネットやSNSが発達した現代は番組で起きた不祥事も『悪事千里を走る』として瞬く間に国内外へ広まるので、常に『最悪の事態』を想定したリスクマネジメント体制を確立しなければまた起きると思う」
「東海テレビが目指していた“No.1”は視聴率・売り上げばかりに終始し、視聴者からの信頼No.1という目標を見失っていたのではないか」
「“ぴーかん”放送当時に実施されていた経営計画は現場実態に即しておらず、かつ『収支・利益・セールス』などといった無味乾燥な単語・業界用語で埋め尽くされていて番組作りの具体像がほとんど見えてなかった」
「目先の財務諸表が良いだけでは企業は続かない」
「人事異動方針は必ずしも希望に沿ったものとは限らず、自分の希望と大きく異なる部署への不本意異動や上司から良いと評価される仕事が出来なければ必要ないと思わせる評価により、社員の士気が低下していたのではないか」
「今回の事件は瞬く間に全国へ広まり、結局は全国から手厳しい批判を受ける形となった。しかし経営陣は放送のことについてはわかるが、ネットのことについてはわからないとばかり(当時の浅野社長も岩手県へ謝罪に出向いた後の記者会見でローカル番組が起こした不祥事の影響が全国へ拡大し、かつ全国からこれだけ大多数の反響・批判を受けるとは思わなかったと発言)なので、ネットも含めた放送の社会的影響について再教育が必要だと思う」
「年に数回実施されている放送倫理研修会は業務多忙で参加出来ない社員も多く、形骸化していたように思う。これも過剰なリストラが原因ではないか。加えて内容が用語など専門的すぎてわかりにくく、かつ放送倫理ハンドブックは改訂・増刷・重版が行われていないため内容が陳腐化し(時代に合わなくなり)、若手社員にはその内容が隅々まで伝わってなかったように思う(業務多忙のため配付された放送倫理手帳類を読む時間は殆ど取れなかった)」
「現場、特に制作部門の声が経営陣へ上がっておらず、現状を把握しないまま経営方針をトップダウンで決めすぎていたのではないか」
「番組スタッフ同士、顔も名前もわからない希薄な関係だった」
「“ぴーかん”スタッフは早朝から深夜まで勤務し、残業もしばしば。スタッフは長時間労働及び時間外労働による疲労が蓄積して心理的余裕がなくなり、生放送本番時における緊張感や連帯感の維持が難しかったのではないか」
「長寿番組ゆえの慣れやたるみが生じ、当事者意識や放送人としてのプロ意識が薄れていたのではないか」
再生(信頼回復)に向けては

「多大な迷惑をかけた岩手県民はじめ視聴者などに対して謝罪と償いをきちんとしたい。あらゆる手段を用いて今回の不祥事を長期にわたり償い続ける姿勢が必要」
「岩手・宮城・福島3県復興のために東海3県在住者・東海テレビ社員として出来ることをもう一度考えたい」
東海テレビ社員とその関係者へのアンケート結果は「セシウムさん事件」検証報告書及び(再発防止及び信頼回復のための)答申書として同社公式サイトに掲載されており、その中で「ぴーかんスタッフは仕事量が急増しているにもかかわらず、人数が少なかったことから、一人あたりの仕事量が多く制作現場が疲弊。こうした環境から番組の品質管理にほころびが生じ、かつ("ぴーかん"スタッフの大半を占めていた)外部スタッフとのコミュニケーション不足が重なったこと。加えて現場従業員からの提案・指摘・意見を受け止める仕組みが十分機能せず、制作現場が抱える課題が経営陣に届かないという問題が今回の放送事故を誘発した」と結論づけた。

第三者の立場から「ぴーかん」不適切テロップ問題を検証する検証・再生両委員会の特別委員を務め、両委員会の活動終了後は東海テレビの社外アドバイザーを務めている音好宏上智大学文学部新聞学科教授は番組の中で「東海テレビ従業員アンケートで8割以上が挙げた問題点は「制作体制の不備」で、それらの声が経営陣に届いていたかというと、残念ながらその仕組みは万全でなかったと言わざるを得ない。高い倫理感を持ったスタッフ(放送のプロ集団)が制作する品質管理の行き届いた番組こそ我々視聴者に感動を与え、情操を豊かにする。社会に信頼され、地域経済や文化の発展に貢献し、視聴者が安心出来る番組を(局の台所事情が苦しい状況であっても)品質管理のきちんと行き届いた環境で制作し放送するのが放送局の使命だ」と述べている。

エンディングでは「今後は岩手県の魅力を取り上げる特番と、米作りに邁進する農家の姿を長期にわたり取材した特番を放送して被災地の人々へ過ちの償いと再発防止を誓う」旨と「今年(2011年以降)出荷される岩手県産米に対しては全て放射性物質の検査が行われ、(国及び各自治体の基準値を下回った)安全と確認されたもののみが市場へ出回る」旨を示すと共に、斎藤徳美放送大学岩手学習センター長兼岩手大学名誉教授からの「今回はまさに災害復旧と原発の問題。不適切テロップで多大な迷惑をかけた岩手の人々への償いとして東海テレビがどのような形で(岩手の震災復興へ)プラスの貢献をし、地道な日々の放送活動を通じていかに(放送界の)信頼回復に努めていけるかが今後試される。日々の報道(良質のニュース、特に岩手の震災復興へプラスの貢献となる話題を視聴者へ届けること)から信頼回復への礎を一つずつ、長期にわたり築く姿勢が今後の東海テレビには求められる」という再発防止に向けた提言も紹介された。

浅野社長(当時)は(検証番組放送終了後の)8月30日午後2時過ぎに記者会見を開き、「今後は番組制作費及び経営計画を見直し、制作スタッフの増員を検討する」旨を公式発表した。同時に「再生するため先頭に立って進んでいくのが責任だ」と述べ、辞任する考えがないことを強調した(のちに2013年からは人事異動により「セシウムさん騒動」発生当時東海テレビ専務取締役を務めていた内田優氏が社長に昇格)。また、検証報告書では、「テロップ送出等の作業がスイッチャー単独では追いつかず、TKやAPもテロップ送出操作をしなければならないほどサブ機能が高度化・複雑化し、スタッフへのテロップ送出ルール確認が徹底されなくなってきていた」、「スタッフの人手不足や超過勤務、コミュニケーション不足などにより看板番組を制作する現場は疲弊し、安全に生放送を行う体制になかった」と結論づけた[48]

この検証番組は放送の翌月9月13日の東海テレビ番組審議会でも取り上げられ、出席した委員からは

「チェック体制がきちんとしていれば今回のような事故は防げた」
「放送の社会的影響に対する理解不足が背景にある」
「細心の注意を払い(風評被害拡大を未然に防止すべく)正しい情報を伝えるべき放送メディアが起こした言語道断の不祥事であり、放送人としての高い見識と倫理観が不可欠だ」
「良いことも悪いことも互いに伝え合う組織間意思疎通(コミュニケーション)が大切だ」
「会社の仕組みとして社員・外部スタッフ相互間連携の悪さがあった」
「震災被災地との今後の向き合いでは、(米作りをはじめとする)農業問題に特化するのではなく、(岩手・宮城・福島3県を中心とした)被災地が置かれている現状も取材すべき」
「経営計画の抜本的見直しは評価出来る。これを機に企業の透明性を高めてほしい」
「放送の原点へと立ち戻り、信頼回復と再生への道を着実に歩んでほしい」
などの意見が出された。

(再生委員会&東海テレビコンプライアンス事務局作成の報告書より抜粋)

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出典:Wikipedia
2018/07/25 14:02
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