うつ病
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8.治療
8.3.薬物療法
NICEのガイドラインでは、抗うつ薬は、軽症から中等症では初期治療が効果を示さない場合において選択肢の一つであり、中等症から重症では、抗うつ薬および心理療法(CBTまたはIPT)の併用を推奨している[150]

2012年の日本うつ病学会のうつ病の治療ガイドラインによれば、軽症うつ病の場合、安易な薬物療法は避けるべきであり、中程症以上のうつ病では薬物療法は軽症に比べてより積極的に行う[146]。希死念慮の強い急性期、重症患者には薬物療法と精神療法、とりわけ薬物療法が重要である。薬物療法では効果がない場合、mECTを検討する[152]

WHOのうつ病ガイドラインでは、12歳以下では抗うつ薬の投与は禁止であり、また12歳以上の青年では抗うつ薬の投与は第一選択肢としては禁止であり、まず心理療法を行うべきだとしている[95]。NIHは、高齢者の場合、再発防止のため薬物療法の併用が有効であるとしている[153]

抗うつ薬による治療[編集]


抗うつ薬の効果は必ずしも即効的ではなく、効果が明確に現れるには1週間ないし3週間の継続的服用が必要である[149]。NICEは処方に際し、患者と離脱症状SSRI離脱症候群など)も含めて副作用について話し合わなければならないとしている[149]

抗うつ薬のうち、従来より用いられてきた三環系抗うつ薬あるいは四環系抗うつ薬は、口渇・便秘・尿閉などの抗コリン作用や眠気などの抗ヒスタミン作用といった副作用が比較的多い。これに対して近年開発された、セロトニン系に選択的に作用する薬剤SSRIや、セロトニンとノルアドレナリンに選択的に作用する薬剤SNRI、NaSSA等は副作用は比較的少ないとされるが、臨床的効果は三環系抗うつ薬より弱いとされる[155]

NICEは薬剤の選択について、他の抗うつ薬より危険性と利益の比率が良好であるため、一般的にSSRIを選ばなければならない (should normally be) としている[149]。さらにNICEは、フルオキセチンフルボキサミンパロキセチンは他のSSRIより薬物相互作用が起きやすく、またパロキセチンは他のSSRIより離脱症状の報告率が高く、三環系抗うつ薬はロフェプラミンを除いて過剰摂取のリスクが高率 (greatest risk) であるとしている[149]

服薬から4週間後に患者の抑うつ症状が改善されていれば、さらに2-4週間の投与を続ける[149]。効果を示さないとか、副作用が生じる、あるいは患者の申出があれば、他の薬に切り替える[149]

抗うつ薬の有効性および安全性については議論がある。うつ病は、治療を行わなくても長期的には自然回復することが多く[156][157][158][159]、数ヶ月以内の自然回復率が50%を越えるため、各種治療法の有効性の判断は難しい[157][159]。アメリカ国立精神衛生研究所 (NIMH) の専門家たちは、抗うつ薬が回復までの時間短縮に役立つ可能性はあっても、長期回復率の上昇には役立たないと考えている[156][157][159]SSRIプラセボ程度の効果しかないとの見解もある[160]

NICEの2009年のガイドラインは、軽症以下の抑うつでは、危険性/利益の比率が悪いため抗うつ薬を継続的に使用してはいけないとしている[161]。初期治療が効果を示さない場合、軽症から中等症では選択肢の一つであり[110]、重症では心理療法と組み合わせて使用するとされる[149]
日本うつ病学会のガイドラインによれば、中等症・重症うつ病に対しては、1種類の抗うつ薬の使用を基本とし、十分な量の抗うつ薬を十分な期間に渡って投与すべきである[155]、また寛解維持期には十分な継続・維持療法を行い、抗うつ薬の投与の終結を急ぐべきではないとしている[155]。一方で軽症うつ病に対しては、薬物療法もしくは体系化された精神療法を、単独もしくは組み合わせて用いることを推奨しており、軽症うつ病への薬物療法の是非は議論が分かれるとしている[156]
抗うつ薬の投与は、抑うつ症状が見られなくなってから9-12ヶ月経過し、かつ日常生活を行うことができる状態であれば、投与中断を検討する[157]。減薬に際しては離脱症状が起こりえるため、4週間以上の時間をかけて行う[157]。重度の離脱症状の場合は投与を再開し、さらに時間をかけて減薬する[157]

その他の薬物療法[編集]


抗うつ薬の治療反応に乏しい場合、別の種類の抗うつ薬への変薬や追加(併用)のほか、炭酸リチウム甲状腺ホルモン抗てんかん薬非定型抗精神病薬の追加(増強療法)、(米国などでは)アンフェタミンメチルフェニデートなどが試みられる。

米国や日本ではアリピプラゾールも既存治療で十分な効果が認められない場合に限って認可されている[165]。抗うつ薬の多剤投与、抗不安薬の多剤投与を合理性なく行ってはならない[159]

不安障害を併発している場合などは抗不安薬を、不眠が強い場合は睡眠薬を併用することも多い[38]。抗不安薬・睡眠薬としてベンゾジアゼピン系がしばしば用いられるが、これらはベンゾジアゼピン依存症ベンゾジアゼピン離脱症候群をまねき、うつ病を悪化させる[38]

各国政府はベンゾジアゼピンの処方を最大でも数週間に限るよう勧告している。
NICEでは、ベンゾジアゼピン系の使用は、慢性的な不安症状がある場合を除き、依存の形成を防止するために2週間以上の投与はすべきではないとしている[160]
うつ病の予防・治療日本委員会 (JCPTD) によると、薬物治療急性期には抗うつ効果発現までのベンゾジアゼピン系薬物処方は有用であるが、依存性のため長期投与は推奨していない[161]
日本うつ病学会ガイドラインでは、中等症・重症のエピソード急性期において、ベンゾジアゼピン単剤、スルピリド単剤、非定型抗精神病薬単剤による治療は推奨していない[159]

中枢神経刺激薬バルビツール酸系の使用は推奨されない[159][162]

薬物療法と自殺[編集]


抗うつ薬による治療開始直後には、年齢に関わりなく自殺企図の危険が増加する危険性があるとアメリカ食品医薬品局 (FDA) から警告が発せられ[163]、日本でもすべてのSSRIおよびSNRIの抗うつ薬の添付文書に自殺企図のリスク増加に関する注意書きが追加された[171]

FDAは、子供・青年・18-24歳の若年者に対しては、SSRI治療は自殺念慮と自殺企図について高いリスクが存在すると報告している[172][173][174][175][169]。成人についてはSSRIと自殺リスクの関係は明確ではない[169]。あるレビューでは関係性が認められておらず[177]、別のレビューではリスクが増加すると報告され[178]、第三のレビューでは25-65歳ではリスクはなく65歳以上では低リスクと報告している[179]。疾病データ上では、新しいSSRI時代の抗うつ薬の普及により伝統的に自殺リスクの高い国で自殺率の大幅な低下をもたらしていると分かった[180]が、因果関係は確定されていない[181]

米国では2007年に、SSRIとその他の抗うつ薬について24歳以下の若年者では自殺リスクを増加させる可能性があるという黒枠警告がなされた[182]。同様の警告は日本の厚生労働省からもされている[171]。米国ではFDAの警告以降に若年者の自殺死者数が増加している。FDA警告の結果、若年者の抗うつ薬治療が少なくなり、結果として自殺者が増えたとすれば問題である[183]

APAガイドラインでは、抗うつ薬は自殺リスクを減らすエビデンスは小さい、しかしうつ症状の軽減に必要だとしている[184]
NICEガイドラインによると、2005年4月にヨーロッパ医薬品評価委員会はSSRIとSNRIについて、子供と青年には処方すべきではない(承認適応症を除くがこれは通常の抑うつは含まない)としている[177]
英国『モーズレイ処方ガイドライン第10版[187]』(2009年)では、うつ病の治療が希死念慮および自殺企図を防ぐ最も効果的な方法であり、ほとんどの場合、抗うつ薬による治療が最も効果的な方法であるとしている[152]
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出典:Wikipedia
2019/11/03 09:30
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