うつ病
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8.治療
8.2.心理療法
心理療法(精神療法)は、精神福祉の専門家が、個人やグループ・家族に対して行い、作業療法士理学療法士精神科医公認心理師ソーシャルワーカーカウンセラー、訓練を受けた精神保健福祉士が実施する[119][120]

貧困、失業、大切な人との離別などがうつを引き起こすこともあるが、社会的、状況的原因を薬で解決することはできない[121]。この場合、心理療法の認知行動療法 (CBT) や読書療法などが有効である[121]。また、心理療法は薬物療法に比べてうつが再発する可能性が低い[122][123]

NICEのガイドラインは心理療法の重要性を認めており、6 - 8回の認知行動療法 (CBT)、または他の根拠に基づいた心理療法を推奨している[110]英国政府は臨床試験で効果が証明された認知行動療法をはじめとする根拠に基づいた心理療法の拡充を開始し成果を上げているとOECDは述べている[124]心理療法アクセス改善)。

1998年、世界精神医学会の「WPA/PTD うつ病性障害教育プログラム[127]」は、高齢者への精神療法の適用について、「精神療法のみ」「精神療法と抗うつ薬の併用」の二つを挙げている。「多様な治療法がある」「再発を予防するために、投薬は継続しなければならない。治療の成功は社会心理的支援がかかせない」としている[128][126]

2009年、プラセボ効果を研究するハル大学アービング・カーシュ博士は「心理療法のみの場合と、心理療法と抗うつ薬を併用する場合の効果の大きさは同じなのだから、なぜ、わざわざ抗うつ薬を持ち込む必要があるのだろうか[130]」と述べている[129]。両方を併用すれば、抗うつ薬だけを服用するより効果があるが、心理療法を単独で行う以上の効果はない[129]

2012年、DSM-IVアレン・フランセス編纂委員長は「精神科の軽度、中度の症状には、精神療法が少なくとも薬物療法と同じくらい効果があり、精神療法のほうが持続効果は長く、副作用は少ないのです。非常に多くの人が必要のない薬物療法を受け、回復に大きく役立つであろう精神療法を受けていないというのは、理不尽であり、経済的動機がそうさせているのだと思います」と述べている[123]

2015年、OECDはうつ病や不安障害については、会話療法(心理療法)は薬物療法と同じぐらい効果があり、また患者にも好まれるとしており[131]、またコストの面からも、うつ病治療の第一選択肢としては書籍ベースまたはコンピュータによるセルフヘルプとするよう提案している[131]

認知行動療法[編集]


認知行動療法 (CBT) とは、外界の認識の仕方で、感情や気分をコントロールしようという治療法。抑うつの背後にある認知のゆがみを自覚させ、合理的で自己擁護的な認知へと導くことを目的とする。考え方のバランスを取ってストレスに上手に対応できるこころの状態をつくっていく(「ストレス#対処」・「ストレス管理」も参照)[132]。さらに、薬物療法が併用されることで、より治療効果が高まる[133]

心理療法の中では、CBTには、子供と青年のうつ病に対する有効性の証拠が多く存在する。CBTと対人関係療法 (IPT) は思春期のうつ病に対して勧められる。NICEでは、18歳未満に対して薬物治療を行う場合はCBT、ICT、家族療法などといった心理療法を併用しなければならないとしている[134]

NICEは、CBTを実施する場合、16-20セッションの治療を3-4ヶ月かけて行ない、また重症では最初の2-3週間は週2回セッションで検討するとしている[131]
アメリカ精神医学会のガイドラインでは、認知行動療法など心理療法は患者の初期治療の選択肢として推奨されている[132]
日本うつ病学会のガイドラインでは、認知行動療法の有効性は中等症以上に証拠があるとしているが、軽症の場合に選択肢に入れている[133]
認知行動療法は、心理職が国家資格化されている国々では、精神科(精神科医、薬物療法中心)、心理療法科(心理士、心理療法中心)に分かれることがあり、薬物療法と同時並行的に行われるとは限らない[138]

日本では2010年に診療報酬が点数化され、外来患者について、認知療法・認知行動療法に習熟した医師が一連の治療に関する計画を作成し患者に説明を行った上で、1回あたり30分以上の認知療法・認知行動療法を行った場合について、16回を上限として算定できる[139]

以上のように、認知行動療法では、認知と行動の両面に働きかけることで、認知の変容(認知の歪みを修正し、合理的で自己擁護的・自己肯定的な認知へと導くことなど)と行動の変容(日常生活の中で楽しみや達成感を感じる活動を増やしていくことを通じて、活動性を取り戻すことなど)を図る[136][141]

なお、認知的技法には、

認知再構成法(否定的なとらえ方と異なる事実や根拠を見出したり、否定的な考え方を反証する事実や根拠を紹介したりした後、新たなとらえ方・肯定的な考え方を治療者が提示したり患者と一緒に模索したりすることにより、新たな考え方を形成すること)
認知の歪みの修正(拡大視・縮小視:自分自身や状況を評価する際に悪い面を大きくとらえて良い面を軽視する、破局視:様々な可能性を考慮せず否定的な未来を予想する、全か無か思考:状況を完璧か最悪かという2つのカテゴリーでとらえる、個人化:否定的な事柄を自分のせいだと思い込む、「べき」思考:厳密な要求を自らに課しそれができないことを責める、など様々な種類の認知の歪みがある[142]。それらを把握した後、患者自身を否定せず、認知そのものを扱い治療者が新たな考え方を提示し、患者が新たな認知を身につけられるようサポートする)
自己教示法(習得したい考え方や行動を自分自身に言い聞かせること。具体的なイメージとともに言い聞かせることや、実際に考え方や行動に変化が生じたらすぐに報酬や賞賛を与えて、考え方や行動の変化への動機づけをさらに高めることが推奨される)
ロールプレイ
などがある[132]

一方、行動的技法には、

行動活性化(日々の生活の中で楽しい活動や達成感を少しでも感じる活動を増やしていくことなどを通じて、行動を活性化させていくことをサポートする技法。このような活動には気分を改善する脳内物質を増やす働きがあるほか、繰り返し生じる否定的な思考に気を取られにくくする効果、気晴らし効果もある[139]。活動記録表を用いて、日々の活動と気分を記録し、活動と気分との関係を把握したり気分がよくなる活動を増やしたりすることもできる[139]。)
行動実験(行動実験にもさまざまな種類があるが、うつ病の治療に用いられる行動実験は、実際に新たな考え方に基づいて行動しそのメリットを体感することで、新たな行動の定着とその行動への動機づけの向上を図るものである)
リラクゼーション
ソーシャルスキルトレーニング
運動
などがある[132]

また、否定的な側面への注目により抑うつ的な自動思考が生じている場合があることから、あまり気づくことのなかった自分自身の良い側面に注意を向けることができるよう患者をサポートする注意変容の技法も有効である[144]。さらに、活動を通じて否定的思考の循環を止めるため、生活の中で楽しめる活動や気分転換を徐々に増やしていけるようサポートすることも重要である[145]

読書療法[編集]


プラセボ効果を研究するアービング・カーシュ博士は、認知行動療法 (CBT) を受けなくても、そのメリットの多くを得ることができる方法として認知行動療法の読書療法を薦めており、臨床試験で良い結果が得られたものの中から2冊を紹介している[146]。『うつのセルフ・コントロール』(熊谷久代訳、創元社、1993年)、『いやな気分よ、さようなら―自分で学ぶ「抑うつ」克服法』(デビッド・D・バーンズ、星和書店、2004年)はいずれも認知行動テクニックに関する本である[146][143]。『いやな気分よ、さようなら』の臨床試験では、短期的には、標準的なCBTを実際に受けた人のほうが改善の度合いが高かったが、3ヶ月後には同等になった[146]。3年間の追跡調査から効果が持続的であることも示唆されている[146][144]。注意点は、読書療法の臨床試験は中程度のうつ病のみを対象として行われたことである[146]。軽症から中等症のうつ病であれば、代替法として妥当だが、重度のうつ病にはどのような効果を発揮するのか分かっていない[146]

対人関係療法[編集]


対人関係療法 (IPT) は、良好な人間関係の形成に向けた介入・良い人間関係を築くためのスキル習得のサポートなどを通じて、人間関係を強化する心理療法である。特にNICEはIPTを実施する場合、IPTを実施する場合は16-20セッションの治療を3-4ヶ月かけて行わなければならない、また重度の場合は最初の2-3週間を週2回セッションで検討するとしている[145]。アメリカ精神医学会の治療ガイドラインでも治療の有効性が確認されている。

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出典:Wikipedia
2019/11/03 09:30
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